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キミなら「右」という言葉の意味をどう説明する? ~三浦しをん「舟を編む」~

すごく今更感のある一冊ですが、改めて。。
というよりも僕は基本的に天邪鬼なのでベストセラーの作品は流行が落ち着いてから読むようにしているので実は本作品も読んだのはつい最近でした。

常に本屋では平置きでしたし、映画にもなっていたので気にはなってたんですけどね。。

 

三浦しをん舟を編む」は2012年に本屋大賞を受賞したベストセラー。
出版社玄武書房に勤める馬締光也がベテランの辞書編集者である荒木に誘われ、辞書の編纂に参加。
一冊を出版するのに5年10年はかかると言われる辞書編纂に正面から向き合い、コミュニケーションが苦手な馬締も言葉で他人を理解する・理解してもらうことの大切さを知り、自身もまた成長を遂げていくというストーリー。

辞書を編むということの舞台裏に隠された膨大な量の言葉との格闘、その果てしない苦労はさることながら、僕にとっては「辞書を読む」ということすら衝撃を覚えました。
辞書は「引く」ものであって「読む」ものという考えは頭の片隅にもありませんでした。
しかし考えてみると自分が何気なく使っている言葉にしても、いざそれをまったく知らない人にどう説明するかと問われると解答が出せないものはたくさんあるように思います。

「知っていて当たり前」を当たり前にしない、辞書の紡ぎ手の意地のような思いがかいま見える辞書は彼等の無名の解答集なのかもしれないと思うと読む楽しさも感じられそうですね。


そして、辞書については前述のように門外漢な僕ですが、作中に出てきた「これから作る辞書には新しい単語や誤用も積極的に取り入れましょう」という方針にはすごく共感できました。
度々ネット上でも言葉の誤用が持ち上げられるのを目にしますが、個人的には言葉というのは有史以来変わり続けているものであり、絶対的にぶれない正解というものは無いと思っています。
今は誤用だとしても50年、100年後にはそれが正しい用例になっている、ということもありえるでしょう。
また、新しい単語や若者言葉についても、それがスタンダードになっている未来を見据えての方針なんでしょう。


そんな柔軟な考えをもったチームが表現や説明の一つ一つに気を配って意地と執念で編んだ辞書なら、読んでみたいなと感じられる一冊でした。

 


ちなみに映画版も観ましたが、主人公演ずる松田龍平さんの演技が非常に良かったです。
不器用ながらも辞書編纂に対して静かに情熱を注ぐ姿勢がイメージ通りでした。
そして宮崎あおいさん演じる主人公の妻・香具矢も控えめながら芯の強い、印象に残る演技でした(そして何よりかわいい笑)
どちらが先でも良いと思いますが、本も映画も楽しめる作品だと思います。