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面白きことは良きことなり ~森見登美彦 有頂天家族~

京都を舞台にした腐れ大学生シリーズが得意の森見登美彦氏による本格狸小説。
本格狸小説ってなんだ。


京都・糺の森に住む、父を亡くした狸の一家が彼らに降りかかる大小様々な厄介事を家族で力を合わせて乗り越えていくというヒューマンもとい狸ドラマ。

 


三男で主人公の矢三郎は呑気で、亡き父の「面白きことは良きこと」という教えに従い日々を面白おかしく過ごすことに邁進。
長男・矢一郎は狸界の中心であった亡き父の跡目を継ごうと懸命に奔走する、が融通が利かずどうにも不器用。
次男矢二郎は父を亡くしたことに大きな傷を受け、蛙に化けて井戸に居ついたら元に戻れなくなるも、まぁそれもやむなしと言う程普段は怠け者。
末子の四男矢四郎は気弱でいじめられることも多く、兄達に守ってもらうこともしばしば。

 

こんなでこぼこな兄弟を中心として、仲の悪い夷川家や狸鍋にせんと目論む金曜倶楽部と大立ち回りを披露します。


狸は虎に化け、天狗は大風を起こし、茶釜は空を飛ぶ。


説明の必要もないファンタジーでありSFコメディな作品になっているわけですが、物語として幼稚になりすぎていないように感じられるのは森見氏のくどい(褒め言葉)文体によるものであり、設定やストーリー展開も過度に凝っていないからでしょう。

 

狸が化けて大立ち回りと聞くとどこぞの名作アニメを思い出しますが、こちらは一貫して「阿呆であること」を貫く狸達の姿が単純に読んでいて微笑ましてくれる作品になっています。

 

小説自体は2007年に「有頂天家族」が刊行され、今年2015年2月に続編となる「有頂天家族 二代目の帰朝」が刊行されました。
三部作となる予定のようですので今後三作目が刊行されることでしょう。

 

一作目の「有頂天家族」では家族のドタバタ劇が、そして二作目の「二代目の帰朝」では本シリーズでは欠かすことのできないもう一つの登場人物?である天狗達の過去にスポットが当てられます。
まだ本シリーズを読んだことがない人は一作目から読むのをオススメします。


「天狗だ狸だなんて下らない・・・」なんて思ったアナタにこそ読んでみてほしい、もこもこの毛皮で心暖められる作品です。